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永遠に進化する画家 [え]
大阪でセミナーがあり、壇上で喋るついでに、草間彌生の個展を観て来ました。
草間のドキュメンタリー映画『わたし大好き』のなかで描き続けていたマジック・ペンによるモノクロのシリーズ『愛はとこしえ』や、

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- 出版社/メーカー: ビー・ビー・ビー株式会社
- メディア: DVD
昨年夏にNHKで放映されたドキュメンタリー番組『世界が私を待っている 前衛芸術家 草間彌生の疾走』のなかで描き続けていたアクリル絵具によるカラフルなシリーズ『わが永遠の魂』が観られます。
特に後者は、マドリッド(王立ソフィア王妃芸術センター)、パリ(ポンピドゥー・センター)、ロンドン(テート・モダン)、ニューヨーク(ホイットニー美術館)と、世界四都市のトップの美術館を巡回する大回顧展のために描き下ろされたシリーズで、日本ではお目にかかれないと思っていただけに、小躍りしてホテルから歩いてすぐの国立国際美術館に向かいました。(このシリーズ、NHKの番組では目標の100枚を達成するところで終わっていましたが、現在もなお描き続けられ、その数は140枚を超えたそうです!)

会場内には夥しい数の反復と増殖が、ほぼ正方形に近い真四角なカンヴァスに納められて、整然と並びます。描かれているものは異常なのですが、カンヴァスのサイズと形、並べ方があまりに整然としていて、まるで何かの科学標本やサンプルの類を観ているようです。
ひとつはっきり言えることは、80歳を越してなお、草間が進化し続けているということです。
93年のヴェネツィア・ビエンナーレに草間を起用して、彼女を「世界のクサマ」に押し上げた立役者、建畠晢氏(京都市立芸術大学学長、埼玉県立美術館館長)は、図録の解説で書いています。
まず、『愛はとこしえ』について、「その即興的で軽やかな手の動きは従来の緻密なネット/ドットの作品には見られなかったもの」と指摘し、04年の森美術館での「クサマトリックス」展で初めて現れた「女性の横顔」が、このシリーズに繋がっていると言います。

そして、『わが永遠の魂』については、「渡米以来の草間のタブローにほぼ一貫して維持されていたオールオーヴァーな構成が解体してきている」と指摘し、華やかな色彩、拡大した水玉、具象的、有機的形象の浮遊により、画面は「生命の讃歌」ともいる、よりナラティブ(物語性)なものになっていると言います。

04年に「クサマトリックス」展を観た人の多くは、そこに草間の仕事の集大成を感じ、彼女がやりきった思いを強くしました。ところが、それから彼女は『愛はとこしえ』50枚を描ききります。我々は驚き、これこそ彼女の到達点だったかと反省させられます。マジック・ペン、モノクロ、即興的なドローイング。芸術家が最後にたどり着きがちな「素朴」な表現に、誰もがそう思ったのです。
ところが・・・・
その後も彼女は変わり続けました。まさに『わが永遠の魂』というタイトルどおり、彼女の進化は永遠に続きます。それを強く思い知らされたのが、展示の最後の方にある最新の自画像です。

眼の中に鏡が嵌め込まれ、照明が反射して、観る人を妖しく照らします。
80歳を過ぎてこの創造力!!
彼女を反復や増殖、水玉や南瓜といった言葉だけで軽く語ることは決してできません。
今回の展示は僕にとって、彼女の進化を確かめるためのものとなりました。
ところで会場には、他の作品と離されるようにして、2010年の作品が2枚掛けられていました。

お馴染の水玉ですが、形が従来の正円から、ややいびつなものになっています。
この二枚の絵を観ながら、僕は、ある一人の画家のことを考えていました。
1960年に48歳でこの世を去った画家、瑛九のことです。
(つづく)

タグ:草間彌生
切断と接続 [え]
明日まで恵比寿の写美では、『日本の新進作家展』と題して、若手(?)写真家5名の写真展を開催しています。
いつもお世話になっているTARO NASUさん所属の春木麻衣子さんもご出展されているので、先日行って参りました。
会場では偶然にも、敬愛する大竹昭子さんが、同じく出展中の北野謙さんとトークの最中でした。
北野さんとは、ここのところよく遭遇します。
はじめは、福島辰夫さんの評論集出版を記念したトークショウ。細江英公先生のトークの相手を務めていたのが北野さんでした。
次は、この出版と併せて開催された写真講座。第3回の光田ゆりさんの講義に、北野さんもご出席なさっていました。
いずれも場所はギャラリーMEMで、やはり明日まで、北野さんの個展を開催されています。
途中からの参加だったため、初めの話を聴けなかったのですが、壁には見たことのない北野さんの写真が映し出されていました。
それは渋谷の歩道橋か何かを写した作品で、僕がMEMで観た写真とはあまりにかけ離れています。
というより、北野さんの作品はMEMでしか観たことのない、独特の雰囲気を持つ肖像写真しか知らなかったのです。

それで大竹さんとのトークを聴いているうちに分かったのですが、北野さんは、このような肖像写真を撮る前は、そういう、渋谷の街とか、風景写真も撮られていた。ところが、95年に阪神大震災とオウムの地下鉄サリン事件があり、それにショックを受けた北野さんは、写真が撮れなくなってしまった。
何かを求めて向かったメキシコで、リベラやオロスコの壁画に出会い、ふたたびショックを受けます。ベン・シャーンや野田英夫、ジャクソン・ポロックや北川民次も衝撃を受けたのですから、無理もありません。
そこから北野さんの試行錯誤が始まります。この素晴らしい壁画の世界を、なんとか、写真で表現できないか。
ご存知のように、壁画では大勢の人が横長の画面に納まっています。

この大勢の人を、壁画のような水平方向ではなく、垂直方向に重ねていったら、どうなるだろうか?
現像写真を見て、北野さんは震えるものを感じたといいます。

それは、やった!という恍惚感と、何か見てはいけないものを見てしまったような恐怖感が、ないまぜになった複雑なもの。北野さんの肖像写真が誕生した瞬間です。
大竹さんと北野さんのトークのキーワードは、「切断と接続」でした。
写真は、シャッターを押すことにより、時の流れを切り取る、切断のメディアといえます。「常に既に過去」と言われる所以です。
しかし、北野さんはこの肖像写真により、時間の接続がなされていると言います。
実は、北野さんが続けているこのシリーズには、現像をしないで、データだけで人物を重ね続けているものがあります。現像をしないということは、無限に重ねることができるということです。そのレイヤーの下層部には、既に亡くなっている人もいるそうです。そして、これから重なるであろう人には、まだ出会っていない。未来に出会うであろう人たち。
北野さんの写真を通じて、過去の人間と未来の人間が、「接続」しているのです。
もうひとつ。
この肖像写真を発見することにより、北野さんは、ふたたび写真を撮ることが出来るようになりました。
トークでは触れられませんでしたが、これも北野さんにとっては、「接続」ではないでしょうか。
芸術というものは、常に他者との関わりで成り立っています。震災とテロで写真が撮れなくなってしまった北野さんは、その時点で他者との関係が切断されたといえます。それが、新たな表現を手に入れることで、ふたたび他者との関係が接続された。
切断と接続ということについて考えさせられた、とても内容のあるトークでした。
もちろん、このような考察を導いてくれるのはいつも、大竹さんによる鋭い言語=左脳のおかげであることは、言うまでもありません。
トークの後で、展示会場を廻り、春木さんの写真を見て改めて思いました。

(画像はNASUさんのHPより拝借しました。)
フレーム・インする人と、フレーム・アウトするまったく違う人を、一枚の写真に納めて、あたかも一人の人間が歩いているように見せる。しかし画面の真ん中には、いかんともしがたい切断面が入る。これも「切断と接続」です。
写美もMEMも恵比寿です。
明日までなので、まだの方はお急ぎ下さい。若い才能の刺激的な写真が待っています。
忘れないために~御礼並びに売上金と寄附金のおしらせ [ことば]
忘れないために、10人による10冊。
昨年12月11日から昨日1月11日までのあいだ、年またぎで開催させて頂きました。
以下、売上金と寄附金を報告させて頂きます。
本の売上:133,600円
雑貨売上の10%:33,850円
御喜捨:11,802円
第1回の繰越金:741円
以上合計、179,993円。これに7円を足した180,000円を、先ほどお約束どおりミシン・プロジェクトに寄付いたしました。
この寄附金額180,000円は、偶然にも第1回の金額と同額です。
単価の高い家具と違って、100円から始まる古本で、これだけの寄附が出来ましたことは、ひとえに本をお買上下さった皆様と、貴重な蔵書をご寄附下さった10人の皆様のおかげと、心より御礼申上げます。
改めて、今回ご出品頂いた以下の皆様に御礼申上げます。
服飾評論家の中野香織さん。現在発売中の雑誌『サライ』では「紳士のもの選び」というご連載をなさっています。是非御覧下さい。
ギャラリー「ときの忘れもの」の綿貫不二夫さん。明日13日より「第22回瑛九展」が始まります。是非御来廊下さい。
美容院BANGSの福永麻子さん。ステキな髪、カッコイイ髪にしたければ、是非BANGSへ!
アート・コレクターでトランペット奏者の三浦次郎さん。現在ご自身のギャラリーを開廊すべく鋭意準備中とのこと。楽しみにしています!
青山綜合会計事務所のあらフォー女子さんとあぐにまさきさん。日本最強の会計事務所です。
Glyph.の柳本浩市さん。2月25日「アーカイブの時代変遷と地域差異」というテーマでご講演をなさいます。是非ご聴講にお出で下さい。
ギャラリーTARO NASUの那須太郎さんと、ギャラリーtaimatzの細井眞子さん。TARO NASUでは28日より眞島竜男「無題(栄光の彼方に)」が、taimatzでは14日より川上雅史の個展が始まります。是非御来廊下さい。
Fructusの成田博昭さん。ここのドライ・ジンジャーとジンジャー・コーディアルは欠かしたことがありません。千駄ヶ谷にリアル・ショップがありますが、ネットでも買えます。是非食べて飲んでみて下さい。風邪にもよく効きます!
ギャラリー「BookGallery CAUTION」の浜田宏司さん。現在「ART and BOOKS Vol.01」を開催中です。明日13日18時よりレセプションが行われます。是非御来廊下さい。
経営コンサルタント前田隆敏さん。「事業成長」で日本を元気にしましょう!
皆様、大切な蔵書をご寄附くださり、本当に有難う御座いました。
そして何より、御忙しいところ、わざわざこんな下町までお出でくださった皆さんに、心よりお礼申し上げます。
皆さんの「がんばってください」というお言葉にどれだけ励まされたか知れません。
ミシン・プロジェクトのリーダー熊谷さんのご来店にも励まされました。有難う御座いました。
末広町のガレージを使ったチャリティもこれでひとまず終了です。
あれから10ヶ月。
報道されませんが、仮設住宅に暮らす方で、自ら命を絶つ方が増えているということを、どうぞ皆さん忘れないでください。
いつか心から笑える日が来ることを祈っています。
皆さま、ほんとうに有難う御座いました。
猿に読ませるつもりで書け [ことば]
正岡子規が大学予備門の入学試験を受けたのは明治十七年の九月であつたが、英語の力の足らぬことを自覚しながら、場馴れのために受けて見ると、果して英語の問題がむづかしい。(中略) 入学試験は意外に簡単に通過したが、その後も依然として英語に悩まされた。或時何かの試験に、隣の席の人が答案を英文ですらすら書いてゐるのを見て、同級生と自分と英語の力がどれだけ違ふかわからなくなった。その隣の人といふのが山田美妙であつた。
「大川端」(小山内薫)の主人公は、はじめて水神に一宿した翌日、女を車で送らせて自分は鐘ケ淵から川蒸汽に乗る。さうして川蒸汽の窓から水神の森を振り返り振り返り行く。何となく情趣のある一節である。あの川筋のことだから、一銭蒸汽はかういふ人の夢を載せて上り下りしたものであらう。
先に福沢諭吉の読売評を記した。諭吉は、もともと俗談平話をよしとして、本を著した人であった。
こんな話がある。若き日の咢堂・尾崎行雄が、諭吉に、著述の心構えを、たずねた。
君は誰に読ませるつもりで書いている、と反問された。すでに何冊か世に送りだしていた尾崎は、得意げに答えた。「大方の識者に読ませるためです」
諭吉が一笑に付した。「猿に読ませるつもりで書け。世の中はそれでちょうどよいのだ」
ひと握りのインテリ層に、喝采されるような難解な書きぶりは駄目だというのである。「障子の向う側にいる下女が聞いて意味のわかる」ように書いてこそ、意義がある。
店主のテーマ「明治を識る」より二冊を紹介しました。
ブログで紹介した本のうち、以下のものは売れてしまいました。
あらフォー女子さんのテーマ「みんなで一緒にがんばりましょう!!」より、
残すところあと1時間、皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
施主をババアという建築家 [たてもの]
昨年9月、辛美沙さんのギャラリーで磯崎さんの個展が行われたとき、オープニングにご本人がいらっしゃるというので、行ったことがあります。会場には、伊東豊雄や藤森照信に混じって、石山修武の姿が。
石山修武という建築家は僕の中で特別な存在感を持っています。
それはある雑誌でのインタヴューでした。個人住宅をやりたくないとう石山は、その理由に「施主がうるさい、特にババアね。ババアがうるさくて、本当にもう嫌なんだ」といったことを挙げていました。
これを読んだ僕は驚きました。
それまで少なくとも僕は、建築家にとって施主=お客様は神様だと思っていました。ところが、お客様をババア呼ばわりして嫌がる。
その不適な面構えと相俟って、「石山修武」という建築家の名前が強烈に脳裏に焼きついたのです。
石山が並みの建築家でないことは、我が山本夏彦が惚れ込んだことで分かります。石山は夏彦が毛綱モン太(のち毅曠)に次いで可愛がった建築家ではないでしょうか。
店主のテーマ「職人という仕事」から一冊紹介します。
石山が夏彦の『室内』に連載した職人訪問記です。相手は農家、大道芸人、船大工、染物屋と多士済々です。
同業者では、先日亡くなった林昌二、安藤忠雄、大野勝彦、伊東豊雄、李祖原がいます。デザイナーでは、粟辻博、山口勝弘、田中一光。倉俣史朗が本郷の生まれ、女優の樹木希林が神保町の生まれというのもこの本で知りました。推挽を山本夏彦が書き、写真を藤塚光政が撮っています。この本がひとつの職人のしごとになっています。
推挽で夏彦は書いています。
初対面の男と男は犬に似て、相手をうかがっているうちに三十分や一時間はたってしまう。私はこのひと筋縄でいかない石川が、同じくひと筋縄でいかない現代の職人と対峙して、よく短時間に和するのに感心して、いや待て建築家は職掌がら接客業者である、建主は一世一代の家を建てるのである、用意の金は十分ではないのである。それなのに望みは十分以上だから、それをなだめすかしつして、しかも我をはるのだから骨である、それを繰返しているから和すことができるのかと合点した。
施主を「ババア」と言いたいのに言えなかった石山の姿が浮かびます。
大量消費時代のロビンソンたちの声を聴いてみてください。
以下、お店の詳細です。
会期:本日1月11日(水)まで
営業時間:18時まで
場所:千代田区外神田3-6-14 (地下鉄銀座線末広町駅より歩いてすぐです。)
皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
(今回も前回同様、ガラス、陶器のほか成田さんの家具・小物、柳本さんのレア・ピースも、若干出品しています。前回来られなかった方は、この機会に是非!)
日本人は時間にうるさい? [ことば]
イタリアで仕事をしていた話をすると、「彼らは時間にルーズでしょう?」と言われることがあります。
確かに、時間はあってなきがごとし。待ち合わせの時間に遅れるのは当り前として、列車の時刻表すらあてにならない。赴任当初はやきもきしたものの、やがては自分までがいい加減になってくるから、慣れとは怖ろしいものです。
イタリア人の同僚と日本で電車に乗っていたとき、車中に到着が遅れたことを詫びるアナウンスが流れました。
初来日でなんにでも興味シンシンのイタリア人が、「何をアナウンスしているのか?」訊いてきました。
数分遅れたことを詫びている、と言ったら、信じられない!!と目を丸くしていました。
このように書くと、まるで我が日本人は、昔っから時間にきっちりしている、とつい思ってしまいます。
ところが、我らが時間に正確になったのは、ついこの間のこと、と書くと驚かれる方もいらっしゃるでしょうか。
店主のテーマ「男のエレガンス」で出品している次の本には、このようなくだりがあります。
正月三日、久し振りの仕事始めの祝宴は、(中略)次のようであった。下足・携帯品預かり・受付け・弁当・ボーイ・案内係等を設けて用意万端整えたが、十時半開会の予定が十一時半になり、日本人的失敗(当時日本人は時間に遅れがちだった)を繰り返したという。日本人が時間に正確になるのは、昭和戦後の高度経済成長期以後である。
昭和五年のことです。
時間にルーズなままのイタリア人と、時間に正確になった日本人。
大切なものを失ったのはどちらでしょうか。
以下、お店の詳細です。
会期:本日1月11日(水)まで
営業時間:18時まで
場所:千代田区外神田3-6-14 (地下鉄銀座線末広町駅より歩いてすぐです。)
皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
(今回も前回同様、ガラス、陶器のほか成田さんの家具・小物、柳本さんのレア・ピースも、若干出品しています。前回来られなかった方は、この機会に是非!)
どら焼きとつけ麺と荷風 [ことば]
どら焼き
湯島に暮らしていた頃、よく使いに行かされたのが、和菓子で名高い「うさぎ屋」でした。当時は建ものも今のようなビルではなく、古い数奇屋のうちで、瓦屋根にちょこんと白兎が乗っかっていました。
いまオフィスを構える日本橋にも暖簾わけがあって、よほど僕は縁があるらしい。甘党の祖父の大好物がここのどら焼きでした。
荷風の『二人の客』(のち『来訪者』)のモデルは、平井呈一と猪場毅です。二人はともに佐藤春夫の紹介で偏奇館へ出入りするようになりましたが、誰にも心を許さない荷風が、ほとんど信じがたいまでに警戒心を解いて付き合っています。
猪場からは冨山房百科文庫版『下谷業話』出版の斡旋を受け、平井には岩波書店が企画した「荷風全集」の交渉を任せるばかりか、岩波文庫版『雪解』の解説まで執筆させる親密ぶり。
ところが、そのような交際もやがて途絶えます。
原因は両氏が荷風の偽筆短冊及び原稿を贋作して売っていたためです。
やがて荷風は両氏と絶交します。
この平井呈一は、上野のうさぎ屋店主谷口喜作の実弟です。谷口は青木書店から出た岡本かの子『巴里祭』その他に題せんを揮毫するほどの趣味人でしたから、平井の出自には賎しからぬものがありました。荷風は江戸文化や古書に精通していて能筆であったうえ多くの翻訳もある平井に眼をかけていただけに、この「事件」は荷風の人間不信にいっそう拍車をかけたものと思われます。
つけ麺
かつて毎日のように通ったつけ麺屋に「吉左右」があります。店の所番地は「江東区東陽1丁目」です。
「江東区東陽1丁目」とは、かつての洲崎弁天町、戦前は洲崎遊郭、戦後は赤線「洲崎パラダイス」があったところです。
洲崎パラダイスのルーツは洲崎遊郭です。更にそのルーツは根津の遊郭です。
根津に遊郭があったと言うと、目を丸くして驚く人があります。谷中、根津、千駄木をまとめて「谷根千」などと呼び、有難がるおかしな流行もありましたから、無理もありません。
しかし、坪内逍遥がひいた遊女花紫こと坪内センも根津遊郭の遊女でした。
吉原に次ぐ東都第二の根津の遊郭が洲崎に移転させられたのは、そのすぐ裏手に東京帝国大学が神田錦町から引っ越してきたからです。我が国の最高学府の隣に遊郭があるのはやはり具合が良くなかったわけです。
かくして明治21年、このために洲崎の海を埋め立てて、遊郭が移転させられました。
明治23年の調査によれば、娼妓の数は1189人。吉原が2442人ですが、吉原は別格の遊郭、それに次ぐ洲崎の繁盛振りが窺えるというものです。
その洲崎遊郭に大打撃を与えたのは吉原同様、関東大震災です。やがて再建されたものの、戦時中の昭和19年には石川島重工の社員寮として接収されました。このとき一部の業者がやむなく移転した先が羽田穴守、飛行場拡張のために更に移転した先が武蔵新田です。
その後戦災で再びみたび壊滅し、その焼け跡に建てられたのが洲崎パラダイスでした。
洲崎は「マワシ」の激しいことで有名だったそうです。
洲崎遊郭の娼妓を主題に荷風が書いたのが『夢の女』です。
野口冨士男の本には、荷風と平井との一件や、洲崎遊郭の話が出てきます。店主のテーマ「荷風の十冊」より紹介します。
忘れないために、11人による10冊。とうとう本日が最終日です。
今日は都合により18時に閉店いたします。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。
ブログで紹介した本のうち、以下のものは売れてしまいました。
店主のテーマ「男のエレガンス」より、
狙っていた皆様、ゴメンナサイ・・・・
ほかにも魅力的な本がたくさんあります。
今回のフェアは、本の売上を原則として全額、ミシン・プロジェクトに寄付します。
以下、お店の詳細です。
会期:本日1月11日(水)まで
営業時間:18時まで
場所:千代田区外神田3-6-14 (地下鉄銀座線末広町駅より歩いてすぐです。)
皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
(今回も前回同様、ガラス、陶器のほか成田さんの家具・小物、柳本さんのレア・ピースも、若干出品しています。前回来られなかった方は、この機会に是非!)
粋と書いてなんて読む? [ことば]
粋
と書いて、なんと読むのでしょう?
イキ
でしょうか?
スイ
でしょうか?
言うまでもないことですが、「イキ」と「スイ」は違います。
イキといえば、姿、かたち、行動について、垢抜けしている、洗練されている、さっぱりして嫌味がないことをいいます。「イキだねぇ」と賞賛するときは「意気」から来るそれなりの気概、一本筋が通っていなくてはなりません。
一方、スイといえば、男女の機微に通じた行動、応対の仕方。親の反対にあっている男女二人の仲をとりもつのは「スイな計らい」。「イキな計らい」とは言いません。
深川の生まれの育ち、大野晋さんのエッセイです。
今回のフェアは、本の売上を原則として全額、ミシン・プロジェクトに寄付します。
モロトフのパン籠 [ことば]
1945年2月、イギリスはドイツ東部の都市ドレスデンを無差別爆撃します。ヤルタ会談で手柄が欲しかったチャーチルによる強引な発想でした。このときの報告書を読んだのがアメリカの少将カーティス・E・ルメイです。狡猾なチャーチルは「命を奪う」という表現を避け、「家を奪う」と説明していました。日本における非戦闘員、一般市民の殺戮をルメイに決意させたのは、英空軍によるドレスデン爆撃だったといいます。
3月10日下町大空襲。春の強風に煽られ火の手は大きく広がり、下町は炎に包まれました。
4月に第二次空襲があり、5月24日を前哨戦として、25・26日に山の手大空襲。世田谷、渋谷、赤坂、杉並、目黒、五反田、品川、大森その他の山の手と、下町の焼けなかった地域にも焼夷弾が投下され、表参道には死体が山積みになりました。
東京大空襲というと下町のイメージがありますが、もちろん山の手もやられています。
店主のテーマ「ことば」に出品している小林信彦の本には、そのことが書いてあります。
先日、チャリティ・ブック・フェアの期間中に、お隣のうちから火が出ました。ボヤ程度の火事で幸い怪我人も出ませんでしたが、消防車は来るわ、野次馬は集まるわで、いっときあたりは騒然となりました。
店内にいたお客様に無事お帰り頂き、お店は臨時休業。念のために売上金を抱えて、階上にいる両親のところへ行くと、不安げな母とは好対照に、何食わぬ顔で茶を啜っていたのが親父です。90歳を超えた彼には、何が起きているのか事態の把握すら出来ていなかったのかもしれません。
おい、オヤジ、火事だぜ。
そういう僕を見て親父はコクリとうなずき、
逃げようたって逃げられるカラダじゃねえんだ、そのときはもうお陀仏だよ。
とうそぶきました。
当時25歳だった親父は神田同朋町で空襲にあっています。
東京大空襲を経験しているから、どうってことないかい?
不謹慎にもそう訊くと、
ああ、モロトフのパン籠が降ってきやがったよ。
はて??モロトフのパン籠??
聞いたことのないことばです。
さっそく調べてみると、「モロトフ」というのは第二次大戦中のソ連の外相の名前で、フィンランドをソ連が空爆した際にモロトフが「資本家階級に搾取されているフィンランドの労働者への援助のため、パンを投下した」と言ったことをフィンランド人が皮肉り、実際に投下された小型焼夷弾を収納するコンテナを「モロトフのパン籠」と呼んだそうです。
日本では市街地空襲に用いられた米軍のE46集束焼夷弾のことを特に指してこう呼んだとのよし。
年寄りと話すと勉強になりますね。
ブログで紹介した本のうち、以下のものは売れてしまいました。
店主のテーマ「荷風の十冊」より、
(これをお買上頂いたお客様は、選書を見て「嬉しい偏りだな~」と言って7冊も買って下さいました。有難うございます!!)
これで漱石も荷風も残すところそれぞれ2冊ずつになりました。
狙っていた皆様、ゴメンナサイ・・・・
ほかにも魅力的な本がたくさんあります。
以下、お店の詳細です。
会期:1月11日(水)まで
営業日時:原則毎日13時より19時まで(但し不規則のため、閉めるときはTwitter@ifukanoでお知らせします。)
場所:千代田区外神田3-6-14 (地下鉄銀座線末広町駅より歩いてすぐです。)
皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
(今回も前回同様、ガラス、陶器のほか成田さんの家具・小物、柳本さんのレア・ピースも、若干出品しています。前回来られなかった方は、この機会に是非!)
ご出品頂いた本と売切れのおしらせ [ことば]
忘れないために、11人による10冊。
会期も明日までとなりました。今日も19時まで開けております。
ご出品頂いたご本の紹介です。
中野香織さんのテーマ「Fashion」より、

The Way You Wear Your Hat: Frank Sinatra and the Lost Art of Livin'
- 作者: Bill Zehme
- 出版社/メーカー: William Morrow Paperbacks
- 発売日: 1999/05/05
- メディア: ペーパーバック
福永麻子さんのテーマ「恋」より、
三浦次郎さんのテーマ「東北生まれまたは在住の作家の本」より、
あらフォー女子さんのテーマ「みんなで一緒にがんばりましょう!!」より、
あぐにまさきさんのテーマ「人生 もう一度 考える」より、
ナイショさん(初登場)のテーマ「有名人が書いた本」より、
ブログで紹介した本のうち、以下のものは売れてしまいました。
店主のテーマ「この男は実在した!」より、

仮面ライダー・仮面の忍者赤影・隠密剣士・・・ 伊上勝評伝 昭和ヒーロー像を作った男
- 作者: 井上 敏樹
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/02/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
狙っていた皆様、ゴメンナサイ・・・・
ほかにも魅力的な本がたくさんあります。
出品情報は随時ブログで紹介してまいります。
今回のフェアは、本の売上を原則として全額、ミシン・プロジェクトに寄付します。
プロジェクトの様子がNHKで放映されましたので、こちらを御覧下さい。(僕もちょっとだけ喋ってます。)
以下、お店の詳細です。
会期:1月11日(水)まで
営業日時:原則毎日13時より19時まで(但し不規則のため、閉めるときはTwitter@ifukanoでお知らせします。)
場所:千代田区外神田3-6-14 (地下鉄銀座線末広町駅より歩いてすぐです。)
ご出品頂いた本につきましては、随時ブログでご紹介します。
皆さん、お誘い合わせのうえ、是非いらして下さい。
(今回も前回同様、ガラス、陶器のほか成田さんの家具・小物、柳本さんのレア・ピースも、若干出品しています。前回来られなかった方は、この機会に是非!)
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